決算書を読む③
今回はお菓子業界からカルビー、湖池屋、明治、森永製菓の決算書をみていきます。
1点注意ですが、以下に利益率や営業利益率などの略称をだしていますが、正確な用語とは異なる使い方と思うのでご留意ください。
ではまずは貸借対照表を確認します。
決算期が異なっていて、湖池屋は2019年6月、その他は2020年3月での比較になっています。
規模が大きい順に明治、カルビー、森永製菓、湖池屋となっています。
総資産に対する当期純利益の割合(ROA)を比較すると、カルビーが8%ともっとも高く、
効率の良い経営を行っていることがわかります。一方で湖池屋のROAは1.8%と他社に比べて低く、改善の余地が多そうです。
次に、資金の調達方法(純資産と負債)をみてみると、カルビーは純資産の割合が大きく、安定性も高いと言えそうです。
一旦、貸借対照表から離れ、湖池屋のROAが低い原因を確認するため、損益計算書を確認してみます。
まず、売上高に対する粗利の割合(利益率)をみてみます。
カルビー | 湖池屋 | 明治 | 森永 | |
売上高 / 百万円 | 255938 | 33965 | 1252706 | 208878 |
粗利 / 百万円 | 115086 | 12784 | 462523 | 110130 |
利益率 / % | 45 | 38 | 37 | 53 |
森永がやや高いですが大体40%前後という感じで大差なさそうです。
次に、粗利のうちどの程度が営業利益となったか、その割合(営業利益率)を確認します。
カルビー | 湖池屋 | 明治 | 森永 | |
粗利 / 百万円 | 115086 | 12784 | 462523 | 110130 |
営業利益 / 百万円 | 27664 | 677 | 102708 | 21230 |
営業利益率 | 24 | 5.3 | 22 | 19 |
湖池屋の営業利益率が他社に比べて極端に小さくなりました。
粗利は、売上高から原価を引いた額。営業利益は粗利から、販売費および一般管理費を引いた額となります。
つまり、湖池屋は他社に比べて販売費や一般管理費が高いということになります。
この内訳を決算書で確認してみます。粗利に対する販売促進費などの割合を下表にまとめました。
カルビー | 湖池屋 | 明治 | 森永 | |
粗利 / 百万円 | 115086 | 12784 | 462523 | 110130 |
販売促進費広告費 / % | 33 | 33 | 22 | 42 |
運賃保管料 / % | 11 | 28 | 10 | 12 |
研究開発費 / % | 2 | 3 | 6 | 2 |
これをみると、湖池屋は運賃保管料の割合が他社に比べて高いことがわかります。
仮に運賃管理費を他社並みの水準にした場合、営業利益はおよそ20億円押し上げられ、営業利益率も他社同等の20%程度となります。
したがって、湖池屋のROAが低い主要因は、販売にかかる運賃保管料が高いためと考えられます。
この運賃保管料の差は、他社との事業規模によるものかもしれませんが、
改善できれば大幅な利益向上が望めそうです。
単年度の決算書だけでは正確とは言えませんので、
今後、数年間の売上推移などをみて各社の成長性を調査しようと思います。